ISMS認証のメリット・デメリットとは?取得手順と合わせて解説します
ISMS認証を取得するとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?ここでは、ISMS認証の定義を確認した後に、メリット・デメリットや取得手順について見ていきます。この記事を通して、ISMS認証への理解を深められるようにしていきます。
目次
ISMS認証とはどのようなものなのか?
ISMSとは、情報セキュリティマネジメント(Information Security Management System)の略称であり、ISMS認証はISO(国際標準化機構)が定めた情報に関するマネジメントシステムの国際標準規格にある要件を満たした際に、取得できる認証のことです。ISMS認証によって、’’情報セキュリティを適切に管理する仕組みが整っていること’’を示すことができます。「適切に管理する」とは、3つの要件:①機密性、②完全性、③可用性を満たすことを意味しています。3つの要素の具体的な内容については、以下の通りです。
①機密性
アクセス権を適切に設定し、許可されたユーザーのみがアクセスできる状態
②完全性
情報の改ざん、削除等を防ぎ、情報が正確・完全な状態であること
③可用性
必要なときに、許可されたユーザーが柔軟・確実に情報にアクセスできる状態
また、ISMS認証の目的は、3つ全ての要素を満たし、有効活用できるように組織の枠組みを整えることとされています。
ISMS認証と似た単語として「ISO27001」や「Pマーク」があります。それぞれ、ISMS認証とどのような関連・違いがあるのでしょうか?「ISO27001」とは、情報セキュリティに関する国際規格であり、ISMS認証を取得するために満たすべき基準を定めたものを指しています。また、「Pマーク」とは、個人情報保護体制が整っている企業に対して付与されるマークです。ISMS認証と比較すると、Pマークは国内の制度であり、Pマークの保護対象は個人情報と限定されているところがISMS認証と異なる点とされています。
ISMS認証をもつメリットについて
ここからは、ISMS認証を取得するメリット・デメリットについて見ていきます。まずは、メリットからです。
顧客に情報セキュリティに関する信頼性を示すことができる
メリットの一つ目としては、顧客に情報セキュリティに関する信頼性を示すことができることです。ISMS認証取得に向けては、国際基準に基づいた第3者から客観的な評価を受けるため、ISMS認証を取得すると、情報セキュリティに関する要件を満たしている企業として、対外的に信頼性を高めることができます。また、信頼性を示すことで、競合他社に対して情報セキュリティ面での優位性をもつこともできます。
入札の条件を満たし、仕事の幅を広げることができる
メリット2つ目としては、入札の条件を満たし、仕事の幅を広げることができることです。近年、官公庁等の行政機関だけでなく、民間企業においても入札条件としてISMS認証の取得が提示されることが増えてきています。そのため、ISMS認証を取得しておくことで、入札できる案件・仕事の幅が広がり、取引先の拡大や売上向上に繋がるきっかけとなるでしょう。
従業員の意識を向上することで、リスクを軽減できる
メリット3つ目は、従業員の意識を向上することで、リスクを軽減できることです。ISMS認証取得に向けて、組織の体制を整えるため、従業員の情報セキュリティへの意識を高めることができます。従業員一人ひとりの意識が向上すると、適切に個人情報を扱うようになり、情報漏洩など人的要因によるリスクを軽減することができます。
業務の効率を向上させる
メリット4つ目は、業務の効率を向上させられることです。社内のマネジメントシステムの体制を整備することは、労働生産性の向上や業務効率の向上が見込めます。ISMS認証の3つの要件である「可用性」にあった通り、必要な時に許可された利用者がいつでも情報にアクセスできる状態は、スムーズな対応を取ることができるため、業務の効率を向上させられます。
ここまで見てきたメリットにある通り、ISMS認証を取得することは、ビジネス機会をもたらすため、あらゆる面でプラスの効果が期待できます。
ISMS認証をもつデメリットについて
次に、ISMS認証取得のデメリットについてです。
費用がかかる
ISMS認証の審査を受けるときには、審査機関に費用を払う必要があります。ISMS認証取得後も、毎年審査を受けなければならないため、継続的な維持費もかかります。さらに審査にかかる費用だけでなく、認証取得に向けて組織体制を整備する中でも、諸々の費用がかかることが見受けられます。このようにISMS認証は取得までも、取得後も費用がかかるところが、企業にとって負担が大きく、デメリットだと言えるでしょう。
業務の負荷がかかる
ISMS認証を取得するためには、マニュアルの作成や文書の管理、従業員への教育など、組織の体制を整える必要があります。また、費用面でも説明した通り、ISMS認証は毎年審査があるため、審査を迎えるにあたって必要な業務もあります。ISMS認証に関連する業務が発生してしまうことは、社内の負担を増やすことになるので、デメリットと言えるでしょう。
このように、ISMS認証には費用面や業務面で負荷がかかるため、メリットをふまえた上で、自社にとって必要・プラスになる認証か、よく考える必要があるでしょう。
ISMS認証取得までの手順について
次にISMS認証を取得するまでの手順について見ていきます。
取得する範囲を決める
まず、ISNS認証を取得する範囲を設定します。ISMS認証は会社全体ではなく、特定の部門など対象を絞って取得することが可能です。事業内容や社内の状況に応じて、取得範囲を決めるようにしましょう。
社内で役割分担をする
取得範囲を決めた後は、社内で役割分担を行います。管理者や内部監査者など、社内で就かなければならないポジションが出ています。誰がどの役割を果たすのか、担当者を明確に決めるようにしましょう。
社内のマネジメント体制を整えて、運用する
上記の役割分担と重なる部分もありますが、ISMS認証に関する担当を決めるだけでなく、社内で適切にマネジメントシステムが運用されるためには、社内の組織体制を整える必要があります。社内の体制を見直し、整えることで、マネジメントシステムがスムーズに運用できるようになります。
審査を受ける
マネジメントシステムの運用後は、ISMS認証取得に向けて認証機関による審査を受けます。ISMS認証取得には、審査を2回受ける必要があり、1回目は書類審査・2回目は運用を確認するための実地審査となっています。
認証を取得する
2回にわたる審査を通過すると、ISMS認証を取得することができます。ISMS認証に基づいて、適切なマネジメントシステムを運用していきましょう。まだ、デメリットで述べたように、ISMS認証は毎年審査を受けなければならないため、継続的なマネジメントシステムの構築・運用が大切です。
まとめ
ここまでISMS認証について、ISMS認証に関する3つの要件から、Pマークとの違い、メリット・デメリットについて見ていきました。ISMS認証には取引先の拡大や社内業務の効率向上など、ビジネス面で多くメリットもありますが、毎年の審査による費用や、負荷がかかるといったデメリットがありました。これらのことをふまえた上で、自社にはISMS認証取得が適切であるか、よく吟味する必要があるでしょう。
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