保険代理店でPマーク取得が増えている理由(後編)
古端です。
今日も昨日の続きです。
前編中編そして本日の後編と、3日間に渡りお伝えして参りましたお話ですが、本日がいよいよ衝撃の結末です。
目次
Aさんの勤務する株式会社D社様(仮名)が実際に遭った事例です
株式会社D社様は、この件がきっかけでPマークを取得する方針をお決めになられました。
【主な登場人物】
・保険代理店営業マン:Aさん
・Aさんのお客様:B社長
・B社長のお友達の:C社長
・Aさんが勤務する保険代理店:株式会社D社(仮名)
・保険メーカー:E生命保険株式会社(仮名)
【前回までの大まかなあらすじ】
B社長からC社長をご紹介してもらったAさんは、C社長がタトゥーがあった為に当初予定していた保険商品に入れなかった事をB社長にご報告してしまいました。
更にB社長は、そのことをC社長に言ってしまい、C社長はAさんの会社へクレームを付けました。
(※以下のリンクは昨日のblog)
B社長にタトゥーがある事をAさんに言われてしまったC社長は、Aさんの会社にクレームの電話をかけました。
C社長「もしもしD社さんですか(怒)?先日お宅のAさんから保険に入りましたCです。」
D社「はい。C様、いつもお世話になっております。先日は有難う御座いました」
C社長「お宅の会社って、保険に入れない理由をご紹介者に言うのですか?!」
D社「いえいえ、滅相も御座いません。お客様の個人情報を公開することは絶対にございませんのでご安心ください」
C社長「でもB社長がAさんから私がタトゥーが入っている事と、それが原因で保険に入れない事を聞いたって言うんですよね~(怒)」
D社「!!(汗)すぐにAから事実確認を致しましてご連絡いたします。」
<代理店D社の上席とAさんはC社長の元へ謝罪訪問>
慌てて菓子寄りを手土産にCさんの元へ駆けつけたD社の上席とAさんは、Cさんに謝罪をしました。
D社上席とAさん「C社長、この度は申し訳ございませんでした(汗)。」
Cさん「謝ってもらっても困りますよ(怒)!会社の経営に影響する事態ですよ!またどこまで情報を漏らしているんですか!?」
Aさん「B社長には詳しいことはほとんど言ってません!またその他の個人情報も何も言ってません!また、B社長にも私の方からしっかりと口止めしておきました(汗)!」
C社長「そんな事信じられませんよ!このタトゥーの件以外にも、家族の個人情報、所得、自宅の住所、またクレジットカードの番号や銀行口座までAさんに伝えてあるのですよ!これ全部漏らしているんじゃないですか!?また、第一口止めしたってそんなの保証できないでしょ~(怒)」
Aさん「そこまでは絶対言ってません!信じてください(涙)!!」
C社長「いいや!そんなことどうやって信じればいいのですか!?タトゥーが入っている事を社会に知れ渡ったら私やうちの会社の仕事に影響します!営業がしにくくなるだけではなく既存の取引先からも契約が切られるかもしれませんし、銀行やVCとの取引にも影響するおそれもありますし、社員も離職する可能性もありますし、etc、、、(怒)」。
D社上席とAさん「、、、、、(汗)」
このような口論が長時間ほど続きましたが、結果的にCさんの怒りと不安は晴れずD社の上席とAさんはCさんの元を後にしました。
<訴訟問題に発展>
その後C社長は顧問弁護士に相談し、加入した保険をもちろん即刻解約、取引のあったB社長ともこのことがきっかけで取引を停止することになりました。
そして更に、D社と保険メーカーE生命保険株式会社に対し、「保険の加入時に支払った保険料の返還」、「保険加入の為の健康診断の為に仕事を半日休んだ分の損害」、「タトゥーがある事を公表した風評被害で営業妨害となり、将来に渡り機会損失を想定した損害」、「家族の個人情報を漏らし不安をもたらした精神的な損害」等々の“損害賠償請求訴訟”を起こしました。
それだけではなく、このことが原因で取引を切られてしまったB社長との件も、D社に対して、「取引停止による営業利益の将来にわたる損害賠償」を求め訴えることに。
更に保険メーカーのE生命保険㈱の代理店であるD社は、E生命からペナルティーを受ける羽目に。
更にさらに、将来が有望であったAさんも、このことがベンチャー企業経営者の中で噂になり、ご紹介件数が激減。
また、一部の既契約者から解約の申し出もありました。
あまりのショックに、Aさんは精神的にダメージを受け、ストレス性のうつ病を発症してしまい、結局AさんはD社を離職することになりました。
<ブランドイメージの改善と今後の被害を未然に防ぐためにPマークを取得>
訴訟の判決結果はどうあれ、言うまでもなくD社が今回本件で被った経済的被害は計り知れません。
D社としても経営の根幹を揺るがす大惨事となりました。
原因は、社員教育が不足していたことがその一つに挙げられます。
保険の免許はあくまで本人の責任の範疇であり、会社としての取り組みとしては社会的に見てもらえません。
D社は、今後同様の被害を絶対に起こさない為と、対外的に個人情報の取扱と社員教育をしっかりと行っている事を証明していくためにも、業界内で取得企業が増えているPマーク取得に取り組むことを考えました。
実は、保険代理店業界でこの手のトラブルは頻繁に起きております。
日本全国で個人情報にまつわるトラブルは、驚くことになんと日に4件の割合でおきているといわれており、そのほとんどが今回のAさんのように「従業員の安易な行動」によるものです。
同様のトラブルは保険だけにとどまらず、社会保険労務士などの士業界でも起きています
ある社長が、ある友人社長に助成金申請を手続してくれる社労士を紹介したところ、その紹介された会社は離職した社員と残業代の未払いで労働紛争中であることが発覚し、助成金が支給されませんでした。
そのことをご紹介者へ社労士が報告したところ、言われてしまった社長は「会社にとって不利益を被る事実を公表した」として社労士を訴える事態にまで発展しました。
訴訟内容は「風評被害による採用コストのロスによる損害」でした。
社労士事務所のPマーク取得数は2014年までは20件程度でしたが、以降急増し今ではその10倍の194事務所となっております。(2017/1/30現在)
弊社でも社労士事務所への支援件数は増えております。
また、昨年2016年のはじめごろ、大手不動産賃貸会社のセンチュリー21において、ある有名芸能人が物件の内見をした際、案内した不動産会社の従業員がTwitterでつぶやいたことが問題になり話題になったのを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。
センチュリー21個人情報漏洩トラブル
訴訟にはならなかったものの、こちらの会社が受けた社会的経済的損害は絶大なものです。
※不動産業界でもPマークの取得は増加傾向にあります。
従業員のTwitterやfacebook等のSNSは企業に甚大な損害を起こす可能性があります。
大企業や外資系金融会社でfacebookで社名をプロフィールに入れるのが禁止されているのはそのためです。
民事とはいえ、訴訟の敗因要因にあるのは刑事罰の個人情報保護法です。
“個人情報保護法違反”というタイトルでの逮捕、訴訟は少数に留まりますが、ベネッセ事件のような不正競争防止法違反や今回のような民事訴訟は頻繁に起きているのが現実で、訴えられたら絶対負けるのは個人情報保護法が裏で機能している方です。
https://cybersecurity-jp.com/security-incident-case/8418
今回のトラブルをきっかけに、D社様は従業員への個人情報に関する社員教育を徹底し、対外的にも「個人情報の取扱を重視している会社」としてのブランドづくりの経営改善を図られました。
第三者認証であるPマーク(プライバシーマーク)は、そのどちらの観点からも有効なため、Pマークを取得するという取り組みで課題解決に向かう事となりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この度、匿名でトラブル事案をご紹介しましたが、こうして保険代理店業界でPマーク取得が増えております。
皆様の経営方針を策定される上で、少しでもご参考にして頂けましたら幸いです。
この記事を書いた人
株式会社UPF
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