情報銀行の実証実験が始まる
7月18日に三菱UFJ信託銀行が、インターネット通販での購買履歴や健康情報などの個人のデータを個人の同意を得たうえで預かり、預かった個人情報を第三者である企業に提供する「情報銀行」のビジネス参入に向けた実証実験を開始することを発表した。今年8月に三菱UFJ信託銀行の行員など最大1000名を対象にした実証実験を始め、2019年度のサービス開始を目指すという。銀行は企業に提供した企業から手数料を受取り、個人情報を提供した個人には提供した情報の内容に応じた対価が支払われることから「情報銀行」と呼ばれる。
具体的なサービス内容は、情報を提供する個人がスマートフォンの専用アプリを使って、提供を許可する企業と提供しても良いとする個人情報の内容を登録。情報を取り扱いたい企業が銀行を通じて各個人が登録した情報を購入すると、情報を登録した個人は1企業あたり500~1000円程度の金銭やその額に相当するサービスが得られる。購買履歴や健康情報といった個人情報を企業が大量に集めて分析することで、新たなビジネスを創出できるとして注目を集めていて、銀行が、情報を活用したい企業と、個人情報を提供しても良いと考える個人の仲介をすることでデータを集めやすくなると考えているわけだ。
現在でも支払い時のクレジットカード利用やポイントカード提示で個人の購買情報を把握できるが、その情報はあくまで契約・登録しているカード会社に止まっているのに対して、情報銀行に登録されればカード会社を超えて購買情報を集めることが可能となり、より大量のデータを分析対象とすることができる。個人の側から見れば、クレジットカードの利用やポイントカードの提示で購買情報が収集されていることを多くの人が理解していると思われるが、情報銀行を利用する場合は自分でスマートフォンに入力することで購買情報が第三者に使われることを「はっきりと」理解することになり、その情報が使われる見返りに対価が得られるとなれば、提供する情報の内容によっては登録し、第三者に利用されても良いと考える人もいるかもしれない。
ただし心配な点として、個人情報を提供した後になって自分が考えていた形とは違う形で利用されていたとしても、全て「自己責任」で片付けられてしまわないかという点だろう。これから実証実験が開始される段階で実際の運用はまだ先ではあるが、個人情報を提供した個人が望んでいない形で情報の利用がされた場合に、情報の本人からの申し出により当該情報の利用を止められるのかといった点も確認したうえで情報の提供を判断すべきである。得られる対価だけに目が行ってしまい、情報を提供した後になって後悔することにならないよう情報提供者としてのリテラシーを高めることも必要だ。
この記事を書いた人
井上
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